檸檬会ではたらく人たち

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世界がより鮮やかに見えるようになった、保育という仕事

保育士 M・Tさん

中学時代は飛び込み競技で県大会1位、高校時代は4年間、農業高校で住み込みの生活を送っていたというMさん。そんな異色の経歴を経て、新卒で檸檬会に入職し、今年で4年目を迎えました。現在は5歳児クラスの担任として、子どもたちの「なんだろう」に寄り添う日々を過ごしています。今回は、保育の道を選んだきっかけから、子どもたちと紙飛行機を追いかけた1年間、そしてこの仕事を通して見えてきたご自身の変化について、じっくりお話を伺いました。

何に悩み、なぜここを選んだのか

――まずは、今担当しているクラスや、これまでの歩みを教えてください。

 

現在は、保育園で5歳児の担任をしています。

1年目は1歳児クラス、2年目は2歳児クラス、3年目は4歳児クラスを担当し、今年はその子どもたちと一緒に5歳児クラスへ持ち上がりました。

新卒で檸檬会に入職したので、社会人としてのスタートもこの園です。

学生時代を振り返ると、中学生の頃は飛び込み競技に取り組み、県大会で1位になったこともあります。高校時代は農業系の学校に通いながら、住み込みで農業を経験しました。草刈りや木の剪定、トラクターの操作まで一通り経験し、高品質なスイカの栽培に携わったこともあります。

 

――そこから、どのようにして保育士を目指すようになったのですか。

 

高校時代に農業をしていたとき、近くの保育園の子どもたちがさつまいも掘りで畑に来ることがあったんです。その時に、引率していた保育士の先生の姿を見て、面白そうだなと感じました。子どもたちもすごく嬉しそうにしていて、そういう

ことに携わるのもいいなと。ちょうど農業の道に進むか迷っていた時期でもあったので、正直かなり悩みました。それでも、やったことのないことに挑戦してみたいという気持ちが勝って、保育の道に進むことを決めました。

 

――今の園に出会うまでの経緯を教えてください。

 

新卒で、本当にギリギリの時期まで就職活動をしていました。園見学は10カ所以上回ったんですが、自分の中では「伸び伸びとした、ゆったりとした保育がしたい」という理想があって、なかなかしっくりくる場所が見つからなかったんです。そんな中、一番最後に見学に行ったのが今の園でした。園庭に草木がたくさんあって、伸び伸びとした

空気が伝わってきたのを覚えています。そして何より衝撃を受けたのが、「コーナー保育」という考え方でした。おもちゃが常に置いてあって、子どもたちが好きなものを選んで遊べる環境づくりがされていて、こんな保育のかたちもあるんだと、強く心を惹かれました。

実際に働いて感じた「ワクワク」と現場のリアル

――コーナー保育のどんなところに、特に衝撃を受けたのでしょうか?

 

それまで実習などで見てきたのは、「この時間はこのおもちゃで遊んで、時間になったら片付ける」というパターンがほとんどでした。それが、ままごとコーナーや積み木コーナーなど、空間ごとに子どもたちが好きに遊べるようになっている。それを見た瞬間、率直に「すごい」と思いましたし、子どもたちも本当に楽しそうで、面白そうだなと感じたんです。

設定保育のように「この時間はこれをする」と決めていないことも、当時教えていただきました。何かをしなければ

いけないということにとらわれず、子どもたちの好きな遊びから保育を広げていく。これは今でも、面白さとやりがいの

両方を感じている部分です。

 

――子どもたちと関わる中で、やりがいを感じるのはどんな時ですか?

 

生活の一つひとつを見ていても、1年で子どもたちがすごく成長することを感じられるのが、この仕事の魅力の一つです。今まで難しかったことが、ふとできるようになっている瞬間に気づけたときは、僕自身もすごく嬉しくなります。

子どもたちとの会話もぐんと弾むようになってきたので、前の日の家での様子を聞いたり、面白い話を聞いたりするのも、僕の中では結構楽しみな時間です。大人の1年間の成長と、子どもの1年間の成長は、目に見えてわかるくらい違うんです

よね。そういうところに、この仕事ならではの魅力を感じています。

 

――昨年取り組まれた「つながる保育研修」について、詳しく教えてください。

 

紙飛行機をテーマに、1年かけて取り組みました。最初はシンプルに紙飛行機を飛ばして遊んでいただけだったんですが、子どもたちとサークルタイムで話し合ううちに、「一番遠くに飛ぶ紙飛行機を作りたい」という話になったんです。

そこから、投げ方や折り方、素材、飛ぶのに適した場所まで、子どもたちと一緒に探究していきました。園庭だけでは限界があったので、園の周辺にあるいろんな公園を回ったりもして。夢中で紙飛行機を飛ばして、自分が一番喜んでいるのは

もしかしたら僕かもしれないと思った瞬間に、保育の面白さとやりがいを感じました。年下のクラスの子どもたちから

「紙飛行機博士だね」と言われたことも、率直にすごく嬉しかったです。

 

――最近、取り組んでいることはありますか?

 

最近は、子どもたちと段ボールで家づくりをしています。もう3代目くらいになるんですが、段ボールなのですぐに崩れてしまって。どうしたらいいか、子どもたちと一緒に考えているところです。紐で結んでみたり、ガムテープをたくさん

貼って頑丈にしてみたりと、子どもたちから積極的に意見が出てくるのが、僕にとって嬉しいポイントです。

一人じゃない。背中を押してくれる仲間と環境

――試行錯誤する中で、周りの方に助けられたエピソードはありますか。

 

紙飛行機の探究を始める前、実は子どもたちとのサークルタイムがうまくいかず、かなり悩んでいた時期がありました。

そのとき、「もう一人では難しいから頼ろう」と思って、当時の3歳児と5歳児クラスの担任の先生に、一緒に話を聞いて

ほしいとお願いしたんです。そこでいろいろなエピソードを聞かせてもらう中で、「体を動かすのが好きだから、そういうことに着目してみたら」というヒントをもらい、それが紙飛行機の探究につながっていきました。一人で抱え込まずに

相談できる環境があることを、あらためて実感した出来事でした。

 

――紙飛行機の探究では、園長先生も関わってくださったそうですね。

 

はい。ずっと試行錯誤を続けている中で、園長先生がすごく寄り添って、一緒になって紙飛行機遊びに参加してくれたん

です。「こういう案もあるんじゃない?」といろいろ出してくれたのも、僕の中ではすごくありがたかったです。

ある時なんて、急にいなくなったと思ったら、パソコンで世界で一番飛ぶ折り方を調べて作ってきて、それで飛ばして

くれたんですが、すぐに落ちてしまって。二人であれこれ話しながら盛り上がって、本気になりすぎて紙飛行機が屋根の上に乗ってしまったこともありました。今でも思い出すと、面白かったなと思う出来事です。

同じ目線に立って、一緒に考えて進めてくれる。そういう横のつながりが、この園の強みなのかなと感じています。

この仕事を通して知った「新しい自分」と未来

――保育を通じて、ご自身が一番変わったと感じることは何ですか。

 

世界が、より鮮やかに見えるようになったことです。子どもたちには、それぞれ好きな色があります。特に1、2歳児クラスの担任をしていた時は、「この色が好き」という子どもたちの世界がすごく豊かで。たとえば、黄色が好きな子がいたら、出勤帰りに車の窓から見える夕日を見て、「この子だったら、今この景色はどんなふうに見えているんだろう」と考えるようになりました。緑が好きな子がいたら、そこに生えている草木は、その子にはどう映っているんだろう、と。そんなふうに、子どもたちの視点を借りて世界を見るようになってから、小さなことに感謝できるようになりましたし、自分の感性も、より豊かになったと感じています。今の自分をつくっているのは、間違いなく保育の仕事だと思います。

 

――これから大切にしていきたいことは何ですか。

 

今はAIがどんどん発達していて、何でもAIが答えを出してくれる時代です。だからこそ、子どもたちには、自分で考えて自分で発見する楽しさを、もっと見つけてもらいたいと思っています。それからもう一つ、僕自身がすごく意識しているのが、小さな日常に感謝できるということです。今の子どもたちを見ていると、たとえば水筒の中に氷が少し多く入っていて、飲んだらいつもより冷たかった。それだけで「幸せ」だと感じられる瞬間があるんです。選択肢が多いことや、いろんな場所に連れて行ってもらうことだけが、幸せではないと思っていて。今日お父さんと話した会話が面白かったとか、今日は絵が思うとおりに描けて嬉しかったとか、そういう小さな感謝を、これからの世代にも広げていってほしいと思っています。

 

――最後に、この記事を読んで檸檬会に興味を持ってくださった方へ、メッセージをお願いします。

 

保育は本当に奥が深いなと思います。相手が子どもだからこそ、時々悩むこともありますが、子どもたちの成長を間近で

感じられるのは、保育士の特権と言っても過言ではないと思っています。保育士は大変な仕事だとも思うのですが、

事務作業が苦手な人、手芸が苦手な人、きっといろいろあると思います。ただ、苦手なことを無理に頑張るのではなく、

苦手なことにきちんと向き合うことが、僕の中では大切だと思っていて。僕自身、紐を結んだり手芸をしたりするのは本当に苦手なので、そこは得意な先生にいつも任せています。そうやって誰かに任せられることも、信頼関係の一つだと

思いますし、そういう環境を見つけられたら、この仕事はすごく楽しくなると思います。周りには、きっとサポート

してくれる保育者がたくさんいるので、そういう人たちを頼りにしていくことも大切です。ありのままでいられることは、檸檬会の良さの一つだと思っているので、ありのままの保育がしたいと思う方は、ぜひ一度、園見学に行ってみてほしいなと思います。